采配 / 落合 博満 著

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落合博満
ダイヤモンド社 2011-11-17

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今シーズンで8年間務めたドラゴンズの監督を退任する落合監督の著書です。
8年間すべてAクラス、リーグ優勝4回、日本一1回と抜群の成績を残した落合監督だけにこの本は売れると思われます。しかも日本シリーズ終了の翌日が発売日ってのも商売上手すぎ。
といっても日本シリーズが第7戦までもつれたからそういう日程になったんだけども。

内容はというと落合監督が試合中の采配だけでなく、普段からの指導や心構えも含めて「采配」として扱っている感じです。

知らなかったんですが、落合監督ってエリート街道を歩んできたわけじゃないんですね。

P.95

20歳の頃、野球部を退部して大学も中途退学した私には、将来の夢も目標もなかった。成人したのだから、何らかの職には就かなければならないだろうと、漠然と考えていたのだけは記憶にある。そんな私が、恩師の伝手で東芝府中で野球を続けられることになり、5年後にはロッテからドラフト指名を受けてプロ野球選手になった。高校、大学、あるいは社会人と段階を踏んで野球の技術を磨いてきた者だけが到達できる世界に、私はまったく異なるルートで飛び込んでしまった、いわば”アウトロー”だ。

P.116

私は東洋大学を中途退学した後、郷里の秋田でプロボウラーを目指したりして過ごしていたが、20歳の時に母校・秋田工業高校の野球部長だった安藤晃先生を訪ね、就職先を探していただいた。それが東芝の府中工場だった。野球部のセレクションに合格し、臨時工員として採用された。

P.204

高校時代は先輩からの鉄拳指導が嫌で入退部を繰り返し、大学は中途退学。社会人の東芝府中も当時は強豪チームではなかったから、プロ入りできること自体を「儲けものだ」と考えているような選手だった。また、プロ野球選手になれば、すぐにクビになっても”元プロ野球選手”になれる。残った契約金で飲食店でも開けば、野球の好きな人は集まってくれるかもしれないなどと考えているような選手だったのである。そして、2年間は1軍とファームを行ったり来たり。そうした下積みを経験したのち、三冠王を3回手にしてプロ野球界のトップにも立った。

エリートどころか、むしろ何度も道を踏み外してて、よくプロ野球選手になったな、という感じです。
プロボウラー目指してて、プロ試験の日にスピード違反で捕まって、試験を受けられなかった、って話は聞いたことあって、そこからどうやってプロ野球に入ったんだろうって疑問だったんだけど、そうか、今で言うと「ニート」やってた時代があったのね。

本書のキャッチは「勝利を引き寄せる66の言葉」となっているんで、その66個を引用しておきます。

  • 「自分で育つ人」になる
    1. 孤独に勝たなければ、勝負に勝てない
    2. 向上心よりも野心を抱け
    3. 「嫌われている」「相性が合わない」は逃げ道である
    4. 前向きにもがき苦しめ
    5. セルフプロデュースとは、目の前の仕事にベストを尽くすこと
    6. 不安だから練習する。練習するから成長する
    7. 「心技体」ではなく「体技心」
    8. 明日の「予習」ではなく、今日経験したことの「復習」がすべて
    9. ビジネスマンも野球選手も、3つの敵と戦っている
    10. 「到達不能に思える目標」こそ、数字に勝つ唯一の方法
    11. 大きな成果を得るためには、一兎だけを追え
    12. 一流には自力でなれるが、超一流には協力者が必要
    13. 30代になにをするかで、40代がきまる。
  • 勝つということ
    1. 「負けない努力」が勝ちにつながる
    2. 何でもアメリカ流でいいのか
    3. 采配は結果論。事実だけが歴史に残る
    4. 「勝利の方程式」よりも「勝負の法益式」
    5. 「今一番大事なことは何か」を見誤るな
    6. すべての仕事は契約を優先する
    7. 大事なのは、勝ち負けよりも勝利へのプロセス
  • どうやって才能を育て、伸ばすか
    1. ミスは叱らない。だが手抜きは叱る
    2. 欠点は、直すよりも武器にする
    3. 最初に部下に示すのは、「やればできるんだ」という成果
    4. 自由にさせることと、好き勝手にすることは違う
    5. 「大人扱い」という名の「特別扱い」はしない
    6. 基本はリストラではなく、今いる選手をどう鍛えるか
    7. 契約はドライに。引き際はきれいに
    8. 平均点から一芸を磨け
    9. スーパーサブとして、厳しい競争社会を生き抜く
    10. 相手の気持に寄り添いながら、自分の考えを伝える
    11. 若手諸君、成長したけりゃ結婚しよう
    12. シンプルな指導こそ、耳を傾けよ
    13. 「見なくてもわかる」で、確実に成長は止る
  • 本物のリーダーとは
    1. 任せるところは、1ミリも残らず任せ切る
    2. 気心と信頼は別物
    3. 「いつもと違う」にどれだけ気づけるか
    4. 安定感より停滞感のほうがリスク
    5. レギュラー争いは、選手同士で決着をつける
    6. 現場の長は、「いつも」ではなく「たまに」見よ
    7. データに使われるな。データを使え
    8. 情報管理こそ監督の仕事
    9. 監督は嫌われ役でいい。嫌われ役がいい
    10. チームに「チームリーダー」はいらない
    11. リーダーは部下に腹の中を読まれるな
    12. できる・できない、両方わかるリーダーになれ
    13. 明日のために切り替えるよりも、今日という日に全力を尽くせ
  • 常勝チームの作り方
    1. 自分で考え、動き、成長させる
    2. 自己成長に数値目標は無意味
    3. 連戦連勝を目指すよりも、どこにチャンスを残して負けるか
    4. 最高の成果を求めるなら、最上のバックアップを
    5. オレ流ではない。すべては堂々たる模倣である
    6. 「初」には大きな価値がある
    7. 自分がいる世界や組織の歴史を学べ
    8. レギュラーの甘えは、完全に断ち切る
    9. 職場に「居心地のよさ」を求めるな
    10. 「極論」から物事の本質を見直してみる
    11. 一人の選手への采配で、チーム全体の空気が変わる
    12. 勝ち続けることに、全力を尽くす
  • 次世代リーダーの見つけ方、育て方
    1. プロフェッショナルは、段階を踏んで育てる
    2. 監督の仕事は、選手ではなくコーチの指導
    3. 世代交代、配置転換はタイミングがすべて
    4. 「リーダー不在の時代」ではない
    5. 俺のやり方は、おまえのやり方ではない
    6. 引き継ぎは一切しない
    7. 誰をリーダーにするか。尊重すべきは愛情と情熱
    8. 仕事の成果と幸せに生きることは、別軸で考える

自身の監督経験を踏まえて、事例でいろんな教訓を教えてくれるんですが、ファンとすれば、いろいろ謎が多かった采配についてタネ明かしをしてもらってる感じです。

就任1年目の開幕投手に川崎を指名した件、2007年の日本シリーズで完全試合目前の山井を換えた件、ゴールデングラブを取り続けている井端と荒木のコンバートなど意図を説明してくれていて、そのときナニを大切にしてこの采配になったのかがわかります。納得するかは別として。

んで、本書の一番最後に書かれたこの一文が、ものすごく落合監督を表している表現だと思うし、僕自身もこうありたいなーと思える一文でした。

P.299

人や組織を動かすこと以上に、実は自分自身を動かすことが難しい。それは、「こうやったら人にどう思われるのか」と考えてしまうからである。だからそこ、「今の自分には何が必要なのか」を基本にして、勇気をもって行動に移すべきだろう。

落合博満は冷静な分析、的確な判断ができる監督でした。そしてそれを行動に移すことができる勇気を持っていた最高の監督でした。
ひとまず、お疲れ様でした。
次の現場復帰を楽しみに待っています。