不恰好経営 南場 智子著 読んだ

4532318955不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子
日本経済新聞出版社 2013-06-11

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DeNAの誕生から社長退任までの経緯を書かれているんですが、ひとつひとつの出来事は南場さんのブログや記事で知ってたりもしたんだけど、DeNAもいろいろあったんだなあ、でも順調だよなあ、ちゅーか南場さんの文章面白いなあ、とか再確認できます。

ビジネス書ではなくノンフィクションドキュメンタリーな感じ。
この本には成功するための経営ノウハウや秘訣は載ってないです。あんまり。あんまり載ってないんだけど、ハッとすることが載っていたのでチョット長めに引用します。

創業当初はよく戦略の方向を5つくらいの案に絞り、社員の皆と一緒に評価して決めていた。ホワイトボードの上方にAからEまでの案をずらっと羅列し、左端に評価の軸をまんべんなく出して、それぞれの軸ごとに各案を評価し、◎、○、△、×を皆でつけていく。
「え?戦略ってそうやって決めるんですか?」とひとりがびっくりして声をあげたこともある。そんな声も気にせず情報を分析した上で評価し、A案とB案が僅差だけれど、これを見るとAだね、などと決定する。まあ実際はもうちょっと複雑だが、そんなイメージ。
さあA案実行だ、となるとその日から想定外の壁が次々と出現する。企画どおりにはいかないな、とひぃひぃ言いながら皆で実行しているうちに、「やっぱりB案だったのかな……」と誰かが言い出し、皆がホワイトボードを思い出す。僅差だったよね、あの◎、本当は怪しかったよね、と。そして皆が不安になり自然とブレーキがかかる。ちなみにB案を選択していてもまったく同じことが起こる。
○、×、△はちょっと稚拙な例だが、意思決定のプロセスを論理的に行うのは悪いことではない。でもそのプロセスを皆とシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破力を極端に弱めることがあるのだ。
検討に巻き込むメンバーは一定人数必要だが、決定したプランを実行チーム全員に話すときは、これしかない、いける、という信念を全面に出したほうがよい。本当は迷いだらけだし、そしてとても怖い。でもそれを見せないほうが成功確率は格段に上がる。

これはねえ、分かっていてもなかなかできないんですよ。というか、苦手なんですよ、僕は。

逆に、いろんな人を巻き込んで意思決定の場に当事者として参加させる、ということには関心が向くんだけど、あえて決定のプロセスは見せず、というか、迷いや悩みを見せずに「これが最もいい方法」として指示を出すってのはかなり勇気がいるというか強い心が必要だな、と。

迷いや悩みをね、言いたくなる。死ぬほど迷って、吐くほど悩んで断腸の思いで決めたんだ、って言いたくなる。たぶんそれはうまく行かなかった時の保険というか、言い訳というか。
「この案なら大丈夫、絶対うまく行くって」って言って失敗したら恥ずかしいじゃない。「ちょっwwwおまっwwぜったいうまく行くっていったじゃんwwww」みたいな。で、あらかじめうまく行かなかったときの保険を掛けとくというか。悩みや迷いを共有して「これが唯一絶対の解じゃないことくらいオレも分かってる」って態度をとりたいじゃない。そんな保険かけてもなんの意味もないのに。失敗の確率高めてるだけなのに。

そんなわけだから、これができる人は強いなーと思うんですよねー。
よく経営者は孤独だ、みたいなこと言われるけど、こういうときに、迷いや悩みを見せず、皆には安心感を与えて、でも一人で迷い悩み苦しんで意思決定の責任を負う、ってのがね。なかなかできないんですよねーと。かっこいいなーと。

タイトルは「不恰好経営」だけど、ずいぶんと格好いいじゃないですか。